えことら -Economy Traveler-

船で働いて休暇は海外!そんな生活に興味ありませんか!?

船乗りの生活・仕事って大変?1 -船員の1日と荷役・入出港-

なってみないとわからない船員生活。船の上での仕事と生活が分からないと、そもそもなってみたいとも思えないですよね。船乗りの大ざっぱな分類は、以前の記事で紹介しました。

 

ecotra.hatenablog.jp

 実は、様々な貨物を運ぶ船に数か月乗って、長期休暇を得るというライフスタイルが、船乗りという業界の中では最も従事者が多い働き方になります。船乗りとして働きながら海外旅行をするというスタンスに合っていますし、僕自身もこのタイプの働き方をしていますので、実体験を交えて貨物船員としての生活を紹介したいと思います。

僕は航海士なので、機関士の働き方については専門外ですので、間違えていたらすみません。

船乗りの生活・仕事って大変?1 -船員の1日と荷役・入出港- では、通常の1日の生活の流れと入港・出港の作業、荷役の仕事について紹介しています。機関士の仕事については軽く触れる程度になっています。

船員の一日

基本は船乗りも一日8時間労働です。24時間稼働していますので、1日を4時間ずつ6等分して、4時間労働して8時間休憩し、また4時間労働して8時間休憩するというのが基本的な1日のスケジュールになります。食事、入浴、洗濯など生活活動はこの休憩時間に行います。

M0(エムゼロ)というシステムを採用している船もあります。エムゼロは簡単に言えば機関室に誰もいない状態で運航し、何か問題が起きた時には担当している機関士が機関室に出向いて対応をする。機械の整備作業は人手が必要なため、昼間の間に8時間全員が出向いて整備を行い、夜間は当直担当者が仮眠をとりつつ、対応するという機関士のみに適用される労働体制になります。エムゼロ手当というものが機関士には別途着くのが普通です。

 

航海単位

船乗りも1日8時間労働ということは説明しました。次はお仕事の単位について説明します。

荷物を積む港に入港→荷物を積む→出港→荷物を上げる港に入港→荷物を揚げる

これが仕事の単位となり、航海と呼びます。終わる度にカウントをし、第1次航、第2次航、第3次航・・・と増えて行きます。

トラックの運転手と同じようなものですが、船の速度はトラックに比べて遅く、時速約19km(10ノット)~時速約38km(20ノット)の為、航海単位は長いと国内でも1週間近くになることがあります。台風などで大しけになるとさらに大幅に遅れたり、走ることができないので避難して錨をおろす(避泊といいます)こともあります。これについてはイレギュラーな労働の項目でも説明したいと思います。

また、東京から横浜に運ぶといった風に1~2時間だけの航海もあります。なので、航海が午前中で終わり、何もないといった場合には4時間の当直に加えて次項で触れる入港作業をいれて4~5時間でその日の仕事が終わる日もあります。

 

入港と出港

船員の1日で触れた8時間労働ですが、これは個人が担当する当直の仕事になります。担当する時間に、ほかの作業の時間が重なると8時間の枠内に含まれますが、担当時間外のときはオーバーワークになります。入出港作業もその一部で、全員が参加します。

航海士・甲板部員は係船索(船と港をつなぐロープ)の準備や、それを巻き上げるウィンチの準備、錨をおろす準備、見張りや警戒、船長の補佐、舵の操作などを入港1時間~30分前から行い、入港着岸が完了して、片付けに20~30分ほどかかりますので、1時間~1時間半の作業になります。

機関士は燃料油の切り替えや、発電機の準備、機関の監視、船によっては航海部門の作業の手伝い等を同じく入港30分前から行い、入港着岸が完了すれば、機関のチェックや、次の出港に向けた準備を行います。

 

荷役(荷物の積載と陸揚げ)

荷役作業は、主に航海士・甲板部員が担当する当直の作業になります。

ステベと呼ばれる作業員に加えて、クレーンや重機を使用して荷物の上げ下ろしが行われますが、船乗りがこの作業に直接参加することはありません。

航海士・甲板部員が荷役において担当する作業は大きく3つあります。

1つ目は船倉の開閉や船に乗り込む為のタラップの設置と収容といった荷役作業前後の準備と片付けです。

2つ目は荷役作業の監視及び、荷役作業員の監視です。日本国内のみ入港する船に従事していても、悲しいことに船上にごみを捨てる、船内の工具や道具を盗む。場合によっては船員の部屋に入り込んで金品を窃盗するなどといった事が起きます。そうならないための監視が仕事です。また、重機やクレーンは数トンから数十トンの重量があり、ぶつかったり、乱暴に作業されるとすぐに船体が損傷します。損傷を起こしたことを確認し、現認書を書いてもらうことで修理費を負担して貰う為に現場を見ておく必要があります。監視の目があることで、そういった不法行為や、損傷を未然に防ぐのが一番の目的になります。

3つ目は船の安全と荷役作業の安全のための作業です。荷物の上げ下ろしによってその重さで船が沈んだり浮いたりしますし、潮の満ち引きでも船は浮いたり沈んだりします。このとき係船索が短すぎると切れる恐れがあります。切れると船が港から離れてしまうだけでなく、切れたロープはすさまじい勢いではねるため、体の一部が吹き飛んだり、当たり所が悪いと即死することもあります。逆に長すぎると船と港の隙間が大きく開き、荷役作業ができなくなったり、突然離れた時には作業員や船員が海に落ちる恐れがあります。そういったことを防ぐために、状況を見ながら係船索の長さを微調整して、安全に作業ができるようにします。また、荷物の上げ下ろしのバランスが悪いと、船は重たい方向へと傾きますので、バラスト水という海水を重たい箇所の逆のバラストタンクに注水したり、重たい箇所のバラストタンクから排水することで、船の傾きを修正します。

一方で、機関士は荷役前後の作業については手伝う船もありますが、荷役作業中は基本的に、機関の整備作業をしています。

 

投稿は以上になります。荷役の1分で触れましたが、船は人間よりはるかに強い力のものや重たいものが非常に多く、気を付けないとケガや命にかかわる危険な部分があります。ですが、責任感や緊張感を持って安全第一で仕事に取り組むことで未然に防ぐことができますので、過度に船=危ないというイメージを持たれなくても大丈夫です。工場や工事現場、建設現場と同じなだけなのです。

さて、後日投稿の後編 船乗りの生活・仕事って大変?2 -休暇とイレギュラーな仕事- では、船乗りの生活・仕事って大変?1 で紹介した以外の仕事について、そして船内での休暇と、待ちに待った長期の有給陸上休暇について紹介したいと思います。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。後編もできるだけ早く投稿したいと思っておりますので、少しだけお待ちください。