えことら -Economy Traveler-

船で働いて休暇は海外!そんな生活に興味ありませんか!?

船乗りは稼げる職業なのか【前編】

船乗りの休みや仕事の実態について紹介してきましたが、やっぱり一番気になるのはお金の話。「ぶっちゃけ船乗りって儲かるの?」ということではないでしょうか。

結論から言うと、一般企業と同じで一部上場企業と、自営業さながらの個人会社と、超絶ブラックが船の世界でも混在していますので、一概に給料が高い、安いは言えません。特に船では船員法が適用され、一般的な労働基準法では守られないのでブラック船会社はそれはもうすさまじいというウワサです。

収入に関して、はっきりしているのは高度成長期のように「一流企業のサラリーマンの何倍も稼げて、数年働けば家が建った」という時代はとっくに終わってしまったので、会社員をするのと大きく変わらないと思っていただければいいと思います。蟹やマグロの漁船も今では外国人研修生を使うケースが多いので、借金返済にマグロ遠洋なんてのもだいぶなくなったみたいですね。

さて、陸と大して変わらない給料で何か月も拘束されるなんて、ひどい!と感じる方もいるでしょう。僕ももう少し陸に比べて明確に高い給料がもらえると期待してこの業界に入った節があるので、ちょっとがっかりでした。

でも、船乗りには船乗りのメリットがありますので、給料や金を稼ぐという視点からまず、前編では「会社による違い」と「船の種類による違い」後編では「手当など給料の内訳」と「ボーナスや退職金」そして総括という流れで紹介していきたいと思います。

 

会社による違い

会社によって違うという話をしましたが、ここでは給料が高い(傾向にある)順にしょうかいしていきますね。当然船にも東証一部に上場しているような一流企業はいくつかあります。

それらは日本郵船(三菱系)、川崎汽船商船三井の3社は御三家と呼ばれ、給料は高いです。当然求人倍率も高く、内定をもらうには二大国立大学の東京海洋大学もしくは神戸大学商船学部を卒業するか、国内に5か所ある商船高専でトップクラスの成績を収める必要があります。ライバルは船に関係ない一流大学卒(船員育成枠での採用)になるので、ここを目指すなら相当勉学に励む必要があります。高い倍率を勝ち抜いて内定をもらっても、船に数年乗った後は陸に引っ張り上げられ営業などの仕事をしなければならなくなるのがほとんどです。その覚悟がないならやめておいた方がいいでしょう。

その下にはその他の中堅企業・中小企業の船社が続きます。基本給・手当の両面で外航船の会社のほうが給料が高い傾向があります。ただ、外航船は過半数の乗組員がフィリピン人やインドネシア人に置き換えられているので英語が必須になり、数少ない日本人の新人は貴重な会社の人材になるので、ここでもやっぱり陸上に引きずりあげられて営業や事務の仕事をするケースが多いようです。外航を目指すなら三級海技士をきちんと取得して商船高専を卒業するのがスタートラインと思われます。

続いて同じく内航船の中堅・中小があります。フェリーの船長などはかなりの高給取りになりますし、一概に内航が安いというわけではないのですが、傾向として3番目にしています。水産高校や海技学校の卒業生はほぼここから下の会社になるかと思います。外航会社が内航部門を持ってたり、子会社を作って内航をやらせているなどというのもよくあるケースです。このタイプの会社に入社し、経験や実績を積むことで水産高校や海技学校の卒業生でも外交を目指すことは可能です。

次は有象無象蠢く一杯船主の会社になります。1隻だけのもしくは数隻の貨物船をゆんこうしている小さな会社です。極限まで行くと漁師の夫婦船のように夫が船長、妻が機関長なんて船もあります。一杯船主の船は小さく、基本的にに4~5人の定員の船ですので、10人未満からせいぜい20人ほどの小さな会社になると思います。社長が船長として乗ってるケースも多くまさに家族経営といった趣で、それゆえに超ホワイトから筆舌に尽くしがたいブラックまで様々です。船員の高齢化と船員不足が深刻になってきており、交代してくれる乗組員が確保できないためにブラック化したり。仕事は黒字で儲かっているのに乗組員が定員まで確保できずに船を動かせず、倒産なんてことが最近は増えています。

公安や官公庁、漁師は会社という区分では説明できないので割愛します。

 

船の種類による違い

積む荷物によって売り上げが全然違いますのでそれと給料が連動していると思ってもらっていいです。ただ、トラックや生コン車タンクローリーのように船にも対応する荷物専用の船になっていますので、単価の高い荷物を運べばいいという単純な話になりません。そして、専用の設備がいる船ほど船の値段は高くなり、整備にも手間やコストがかかります。

さて、おそらく一番儲かるのは原油やガソリン・軽油を運ぶタンカーと、化学薬品等を運ぶケミカルタンカーでしょう。基本給はほかの船と大きく変わらないこともありますが、膨大な手当てが付き、初任給でも45万~50万以上が普通にゴロゴロしている船です。デメリットは健康に関するリスクで、気化したガスなどを日常的に吸い込むことで様々な健康被害があります。タンクの中に積む荷物が変わる際に清掃するのは船乗りで、この薬品が劇薬であったり、適切な手順を踏まなかったために重篤な症状に陥ったり、死亡事故も起きています。とにかく稼ぎたい人におすすめの船です。

次に儲かるのは自動車専用船です。荷物1つ1つの価格が高いので売り上げも大きく、給料も高いです。カーフェリーやトラックシャーシ専門もRORO船もここに含まれます。リスクは船が揺れて荷物が崩れるとどうしようもなくなることと、燃料を入れた状態の為、何かの際に火災や爆発が起きることです。荷崩れが起きたために数十度傾いたまま座礁したケースや、ガソリンに引火して火事になり、犠牲者が出たケースなどがあります。

続いてセメント船です。相当厳しい時期もあったようですが、オリンピック需要などで売り上げが上がっているようです。リスクはセメントの粉やセメント原料の石炭灰を吸い込むことによる健康被害です。とくに荷役機会が詰まると、粉が待って前が見えない艙内に入って直す必要があり大変です。艙内は湿って固まらないように過熱しているためサウナのように暑いです。

最後はその他の貨物です。コンテナや鋼材、石炭や石灰石、鉄鉱石などの原料、スクラップや土砂など、その他何でもです。これらの荷物も専用船があり、荷物の種類によってまちまちです。

タンカー・ケミカルタンカーが突出して高く、続いて自動車船であとは運ぶ荷物によって違うとおもってください。

 

前編は以上になります、ここまで読んでいただきありがとうございました。前編では稼げる給料の幅について会社の規模と船の種類から比較してみました。

例えばそこそこ大きな会社で巨大タンカーに乗れば、年収1000万円は現実に手の届く範囲になりますよ。

続いて後編では、手当やボーナスといった給料の面から船乗りの収入事情も執筆していますので、合わせて読んでみてくださいね。