えことら -Economy Traveler-

船で働いて休暇は海外!そんな生活に興味ありませんか!?

船乗りは稼げる職業なのか【後編】

前編では会社や船によって給料の大枠がどう違うかについて紹介しました。
さて、後編は小さな視点で給料の内訳などの面から船乗りの収入事情を紹介していきたいと思います。

 

役職による違い

船乗りにも部長や課長のような役職があります。現在では船長を筆頭に一等航海士、二等航海士、三等航海士、甲板長、甲板手、甲板員となり、役職が上がるほど基本給、手当共に増えて行きます。また、年齢や勤続年数が増すほど高くなる年功序列に近いシステムになっている所が多いです。入社時の基本給に年次昇給と役職加給を加えたものが基本給になります。

基本給は賞与(ボーナス)や退職金の算定基準になり、また陸上有給休暇中に支給されるのは基本的にこの基本給のみになります。


そのほかの手当など給料の内訳

乗船している間は基本給に加えて、様々な手当が付きます。

まずは職務手当で、これは前項で紹介した役職によって付与される手当になります。

次に航海日当というもので、これは乗船中は日割りで与えられます。

船内の衛生・清掃作業につく衛生手当、自炊する必要のある船舶で付与される調理手当、労働協約で規定されている期間以上に連続して乗船している際に支払われる長期乗船手当、M0(エムゼロ)船に乗り込む機関士に与えられるM0(エムゼロ)手当など、様々な手当てがあります。


ボーナスや退職金

基本給を元に算定されて支払われる船会社が多いです。船員組合に加入していない船会社では、ボーナスや退職金に対する規約がなく支払われないところもあります。その場合は基本給が高かったり、陸上休暇中も手当込みの総額が支払われる年俸制になっていることが多いです。


船乗りのセカンドライフ

介護しなければならなくなった、病気やケガで長期に船に乗れなくなった、毎週休みのある仕事がしたくなった、という時の船乗りの再就職先について、紹介してみます。

開業する、一般企業に転職するという形以外でどんな道があるか、主に伝聞ですがいくつかの道があります。

まずは、水先案内人(パイロット)やドックマスター・ドックセーラーになる道です。船に乗るというライフスタイルを維持しながら通勤する生活ができる職業で、パイロットはパイロット試験を受ける条件を満たしたうえで受験し合格することで資格を得ることができます。取得後は先輩と同乗し研修を修了することで独立し個人事業主となって船に乗り港や水路の操船を補佐する仕事になります。ドックマスターは船の建造や修復を行いドックに所属し、ドックに出入りする船の操船や試験運行を指揮します。ドックセーラーは甲板手・甲板員に当たり、ドックマスターの指示に従い操船の補佐をする仕事です。ドックマスターやドックセーラーはドックの求人に応募し採用されることで転職できます。

教員になる道もあります、三級海技士資格を持ち、乗船履歴を付けることで、教員免許としてしようすることができ、水産高校や海技学校等で航海科・機関科の座学や実習の教師として働くことができます。

海事代理士は船・海上に特化した船の法律専門職で弁理士行政書士のような職です。国家資格に合格することで開業することができます。海難審判など海上での事故の裁判などに弁護士の代わりに被告の弁護を行ったり、海技免状や船員手帳その他書類の取得や更新業務の代行などを行います。海技学校で海事法規の教師として教鞭をとることもできます。

また、船舶免許ははく奪されない限り永久に効力を持ちますので、有効期限が切れても再発行・更新の手続きを完了することで再び船に乗ることも可能です。船に乗ってしまったら船しかない、船を下りて何年もたったらもう乗れないということはありませんので、安心して下さい。


普通にサラリーマンするより貯められます!

パイロットや1万トンを超える大きな船の船長になれば月収100万超えることも珍しくないものの、新卒で就職して20~30代の間は20万~40万円台のことがほとんどなので、会社員に比べて大きなアドバンテージがあるとは言えません。

ですが、船には給料の額面だけでは見えないメリットがあります。それは衣食住保証の原則というものです。これは、船に乗り組んでいる間の衣食住は船会社が保証しないといけないというものです。

衣については戦場で仕事をする上で必要な装備についてで、ツナギや作業服、防寒着や長靴・安全靴・ヘルメット・手袋といったものを支給もしくは貸与するというものです。一式全て購入するとかなりの額になりますので大きいです。自分の好みのものが欲しい場合は自費で購入しないといけない場合があります。肌着・下着や乗下船、船上休暇で着る私服については保証はありません。

食については船舶調理師が乗り組んで3食提供する義務があります。その際の食費は会社負担です。小さい船では船舶調理師が乗り組んでいない場合には自炊をする必要がありますが、食料購入費については一定額が支給されます。船舶調理師の食事が気に入らない、口に合わない場合の自炊や間食・夜食については自費での購入になります。

住は船内での個室の割り当てられ、電気は自家発電、水道はタンクに給水したものを利用するので負担はあります。布団や冷蔵庫・テレビなどは備え付けられてることがほとんどですが、パソコンや給湯器・ドライヤーなどが必要な人は自分で用意しないといけません。

以上の保証があるため、乗船中は会社員に比べて大きく生活に必要な経費を削減し、その分を貯蓄や旅行資金に回すことができます。

僕も20万~30万円台の手取り給料ですが、年に3回ほど長期海外旅行に行きながら毎年100万円以上の貯金をしています。